西大寺の愛染明王坐像特別公開

西大寺に伝わる有名な愛染明王坐像を拝観して参りました。

鎌倉時代の重要文化財で、像高31.8cmと意外に小さい仏像です。西大寺の愛染明王は秘仏で、特別開扉期間にのみ拝観することができます。私が訪れたのは2月3日の星祭の日でした。

西大寺愛染明王坐像

西大寺の愛染明王坐像。

迫力ある忿怒の表情をしていますね。額に見られるのは第三の眼でしょうか、心の中を見通す目!身体の7箇所にあると言われるチャクラですが、眉間にもそのチャクラが存在しています。怒髪衝天を表すかのように髪を逆立て、獅子の宝冠を被っています。

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仏師善円作の愛染堂本尊

男女の愛欲を浄化させるという愛染明王。

縁結び家庭円満にもご利益があると言われます。

西大寺の愛染明王坐像は、西大寺中興の祖・叡尊(えいそん)の意を受けて仏師善円(ぜんえん)が制作しました。秘仏として祀られていたため、今も全身に赤い彩色が残されています。

西大寺愛染堂

西大寺愛染堂。

「西国愛染明王霊場」の木札が掲げられます。国宝の興正菩薩叡尊坐像も安置される愛染堂ですが、その拝観料は300円でした。西大寺を代表する愛染明王と叡尊の生前像を拝観して300円。これは、かなりの割安感があります。

西大寺南門から望む本堂

西大寺南門から本堂を望みます。

本堂の前には東塔跡が見えています。

西大寺にアクセスする際、近鉄西大寺駅から石落神社の前を通って東門から境内へ足を踏み入れました。右手に四王堂を見ながら本堂前に出ましたが、どうやらこの南門から入るのが正規ルートのようです。正面に本堂、これが一番しっくりくるアングルだと思われます。

愛染明王坐像の絵馬

一願成就と書かれた南都西大寺の絵馬。

五角形の絵馬の中心には、愛染堂の御本尊・愛染明王坐像が描かれています。

日輪(太陽)を象徴する円形の光背も赤色を帯び、造像当時の彩色が残る貴重な仏像とされます。宝瓶蓮華に坐し、弓と矢を手にしています。宝治元年(1247)に叡尊が願主となり、仏法興隆の念持仏として仏師善円が造りました。

西大寺愛染明王坐像

JR東海の宣伝ポスターですね。

6本の手を持つ愛染明王ですが、その中の左手第三手にだけは何も持っていません。拳を握り、手のひらを上に向けています。それ以外の手には弓、矢、蓮華、五鈷杵等々が握られています。なぜ左の第三手だけが素手なのか?妙に印象に残りますね。

愛染明王の作者である仏師善円は、東大寺指図堂の釈迦如来坐像を造った仏師としても知られています。

ところで、西大寺の愛染明王坐像には興味深い伝説が語られます。

弘安4年(1281)の元寇の役に際し、叡尊が敵味方の一兵も失うことのないよう石清水八幡宮にて祈祷を捧げたそうです。蒙古退散を祈る元軍調伏祈願ですね。その時、叡尊の持仏である愛染明王の鏑矢が妙音を発して西に飛び、モンゴル軍を敗退させたと伝わります。

この伝説に因んで、宝暦4年に愛染明王坐像が江戸回向院に出開帳された時、2代目団十郎が中村座で「矢の根五郎」を上演したそうです。また浮世絵画家の鳥居清信が描いて奉納した絵馬が、寺に現存しているとのこです。

西大寺愛染堂前の石

うん?これは何でしょう。

愛染堂前にどっかと腰を下ろしていました。

西大寺境内図

西大寺の境内伽藍案内図。

境内の西の方に愛染堂があるのが分かります。東塔跡の南東方向には西大寺の駐車場が控えています。

西大寺本堂と東塔跡

東塔跡と寄棟造の本堂。

恋愛におけるキューピット役をも担うという愛染明王坐像。

西大寺の御本尊は本堂に祀られる釈迦如来立像ですが、人気の面では本尊をも凌ぐ仏像ではないでしょうか。一度見たら忘れられない、背筋も凍るような厳めしい表情。それとは打って変わって恋のキューピット役とは(笑)

払子を持つ愛染堂の国宝・興正菩薩叡尊坐像

愛染堂には国宝の仏像も祀られています。

平安時代に衰えた西大寺を見事に復興させた叡尊の生前像。長命を祝って生前に造られた肖像彫刻で、その写実性には目を見張るものがあります。まさしく叡尊の生き写しを見るようでした。

興正菩薩叡尊坐像

興正菩薩叡尊坐像。

左手に仏具の払子(ほっす)を持っています。

払子とは、長い獣毛を束ねてそこに柄を付けた仏具のことです。蚊や虫を殺さずに払う道具で、日本では禅僧が煩悩や障碍を払う標識として使用されていました。

弘安3年(1280)に、弟子たちが仏師善春に造らせた師匠の肖像として伝わります。背筋を伸ばし、少し俯き加減に座しています。衣文の表現が実に豊かですね。

石燈籠と愛染堂

本堂前の石燈籠から愛染堂を望みます。

木造彩色の興正菩薩叡尊坐像は、生前に造られた寿像(じゅぞう)としては特異な地位を占めています。

西大寺の御朱印

西大寺の御朱印でしょうか、南無興正菩薩と記されていますね。

長く垂れ下がった眉毛が特徴的です。

国宝指定の興正菩薩叡尊坐像

「戒律復興の旗手 80歳の威厳」と題する新聞記事。

戒律の僧らしい不屈の意志が感じられる肖像です。威厳に満ちたお姿の中にも、長く垂れた眉毛からは福徳円満の相が見て取れます。

叡尊の彫像は他寺にもあるが、宗内ではこの像を根本像として尊崇。
少年期に出家、京都の醍醐寺や高野山などで修行、30代半ばで西大寺に入った。空海の真言密教、鑑真の戒律、行基の社会事業などを学んで「興法利生」を願い、戒律と密教を両輪にして活動した。
空海、鑑真、行基などの仏教界におけるスーパースターたちの名前が並びます。先賢たちのエキスを結集して、新たな道を開拓していった叡尊の事績が偲ばれます。

西大寺大黒堂

愛染堂の向かって右手に佇む大黒堂。

一輪の花が、一輪であるが故の華やぎを境内に解き放ちます。

西国三十三カ所観音霊場の石仏

西国三十三カ所観音霊場の石仏群。

境内の南西隅に居並んでいました。

西大寺愛染堂

節分会の準備が進められる愛染堂。

先ごろ、興正菩薩叡尊坐像の像内からおびただしい納入文書類が発見されたそうです。その文書類から、叡尊を模した肖像彫刻が数千人に及ぶ弟子僧俗の結縁によって造られたことが分かりました。一紙半銭のわすかな喜捨が結集されて完成した稀代の生前像。そのプロセスを知れば、なお一層有難味も増すというものです。

西大寺の仏像写真

左から愛染明王坐像、西大寺本尊の釈迦如来立像、阿弥陀如来像。

京都清涼寺に安置される釈迦如来立像の模刻による西大寺御本尊。見るからに珍しいお姿をなさっていますね。清凉寺式の釈迦如来と言われる所以です。

西大寺手水舎の手拭い

手水舎に掛かる手拭い。

奈良時代に創建された官大寺を総称する南都七大寺。

その内の一つに数えられた西大寺ですが、2015年度には創建1250年を迎えています。東の東大寺に対する西の西大寺。聖武天皇の娘・称徳天皇が鎮護国家の思いを込めて開創したお寺、それが西大寺です。

西大寺を拝観して、改めてここが仏像の宝庫であることを確認致しました。

<西大寺の拝観案内>

  • 住所  :奈良県奈良市西大寺芝町1-1-5
  • 開基  :称徳天皇(勅願)
  • 本尊  :釈迦如来立像(重要文化財)
  • 拝観料 :境内無料 4ヶ所共通拝観券800円(本堂・愛染堂・四王堂・聚宝館。それぞれ個別での拝観も可)
  • 拝観時間:10月~5月 8時30分~16時30分(6月~9月は17時30分まで);各お堂によって違う

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