木造十一面観音立像特別公開の国分寺@橿原市

天平時代創建と伝わる大和国分寺

橿原市市制60周年記念イベントとして、重要文化財の仏像が二体特別公開されました。普段は拝観することができない国分寺(八木町)の「木造十一面観音立像」と正蓮寺大日堂(小綱町)の「木造大日如来坐像」が揃ってお目見えです。

一日限りの特別公開でしたが、ちょうど昼下がりに時間が空いたので訪れてみることに致しました。

国分寺本堂

国分寺本堂。

まだ真新しい本堂でした。

実は2003年8月に本堂が焼失してしまったそうです。重要文化財の十一面観音様は鉄筋コンクリート造の収蔵庫にいらっしゃったためご無事だったようです。今回の記念行事では、本堂内でご住職の法話を聴く幸運にも授かりました。

スポンサードリンク

後補による長谷寺式十一面観音

大和国分寺のある場所は横大路(伊勢街道)のすぐ近くです。

かつてお伊勢参りで賑わった街道近くに建つお寺故なのか、その秘仏もどこか長谷寺の御本尊とよく似た格好をなさっていました。長谷寺十一面観音と同じ ”右手に錫杖、左手に水瓶” のスタイルです。しかしながら、国分寺十一面観音立像に関しては最初からそのような格好をしていたかは疑問が残ります。

国分寺十一面観音収蔵庫

国分寺の仏像収蔵庫。

高床式の収蔵庫が本堂裏手にありました。この中に重文指定の十一面観音立像が安置されます。

本堂法話の後、収蔵庫前で県文化財保存課の神田雅章氏による仏像解説がありました。神田氏がおっしゃるには、こういう収蔵庫の中に仏像が祀られるようになると、周辺住民の仏像離れが進むそうです。確かにそうでしょうね、鉄の扉の向こうにいらっしゃるのでは親近感が湧きません。仏像そのものは後世まで保存されるわけですが、肝心の文化が育ちません。

考えさせられるお話です。盗難や火災の恐れはあっても、お寺の金堂の中に仏像が祀られているだけで有難味が違ってきます。人の目、人の気配を常に感じながら仏像は守られていくものなのかもしれません。

国分寺山門

国分寺山門。

今回私はJR畝傍駅方面からアクセスしたのですが、徒歩3分ぐらいの距離でした。

かつて、この辺りも含めた大和国中(やまとくんなか)は興福寺の影響下にありました。隠国の長谷観音も特別公開のようなことが行われていて、かなりの参拝客があったようです。当然お金が落ちるわけですが、全て興福寺の肥やしになっていたようです。長谷観音の人気ぶりを見て、あちこちで長谷寺式十一面観音が造られたと言います。

国分寺に祀られる木造十一面観音立像も、そんな流れの中で ”長谷寺式” にシフトしていったのではないかと思われます。

JR畝傍駅から大和国分寺へアクセス

上記掲載写真の山門が表玄関だと思われますが、かなり入り組んだ迷路の先にありました(笑)  到着したのは裏口からだったので、この表玄関へのアクセス方法はよく分かりません。こんな所に大和国分寺があったのですね、ちなみにすぐ隣りには金台寺というお寺がありました。

国分寺は下ツ道(中街道)と横大路(伊勢街道)が交差する札の辻から南東方向に位置しています。JR畝傍駅からだと、国道165号線沿いの延命院八木寺(春日神社)の脇を北へ向かいます。しばらくすると、橿原市の職員と思しき方が道路脇に立っておられました。分かりにくい場所にあるお寺ですので、これは渡りに舟でした。

JR畝傍駅

JR畝傍駅。

大和国分寺の最寄駅です。貴賓室で有名な駅舎ですね。畝傍駅から徒歩3分ですが、近鉄八木西口駅からも徒歩5分ほどでアクセスすることができます。ついでに付け加えておけば、近鉄大和八木駅からでも十分に徒歩圏内です。

おふさ観音への長寿道

JR畝傍駅から小房観音へと通じる長寿道が出ています。

バラや風鈴が人気のおふさ観音ですが、下ツ道を南に辿り晩成小学校の先に位置しています。おふさ観音からさらに東へ足を伸ばせば、持統天皇の藤原宮跡へと続きます。観光名所があちこちに散在していますので、国分寺にお参りの際は周辺観光も楽しんでみられてはいかがでしょうか。

橿原市市制60周年記念行事

国分寺の本堂裏手。

テントが張られ、簡易受付所のようになっていました。

橿原市が誇る、非公開の仏像二体が同時公開されています。

国分寺収蔵庫横の花

収蔵庫脇に咲く花。

市制60周年を祝っているかのようですね。

国分寺鐘楼

本堂横を通って正面へと回り込みます。

墓石や宝篋印塔、地蔵石仏が周りを取り囲みます。行く手に見えるのは鐘楼ですね。

国分寺鐘楼

国分寺の鐘楼。

蟇股や懸魚の意匠が美しく映えます。

国分寺地蔵石仏

蓮台の上に坐す地蔵石仏。

歴史を感じさせるお地蔵様ですね。

ところで、国分寺の十一面観音立像は欅(けやき)の一木造なんだそうです。

頭上の化仏など、厳密に言えば後から付けられた部分もあるようですが、基本的には一木造の仏像です。西暦1,000年前後に造られたようで、古色を呈した見た目が印象的です。亀裂防止や重量軽減のために内刳(うちぐり)も施されているようです。長方形に施された背刳(せぐり)は上下二段に分かれ、そこに背板が当てられています。

目尻の吊り上がった個性的な表情もこの仏像を特徴付けます。

一見すると厳しい表情にも見えますが、そこには目を細める慈愛の念も観て取れます。両膝の上下部分には翻波式衣文(ほんぱしきえもん)が刻まれています。着装した状態では、通常あり得ないような文様が深く刻み込まれ、唐様から和様へと移り変わる過渡期にある仏像であることを思わせます。

法話で聴いた仏縁、法縁、僧縁

私が国分寺に到着したのは、ちょうど午後1時30分前だったようです。

「今から本堂で法話が始まりますので」と係の方に促されて、本堂へと向かいます。お寺で法話を聴くのは久しぶりだなぁと思いつつ、巡り合わせの良さに感謝します。

国分寺地蔵石仏と本堂

ぞろぞろと参拝客が集まり始めていました。

この地蔵石仏も右手に錫杖を手にしていたのでしょうか、その痕跡を見る思いがします。杖をついて衆生の元まで降りて来て下さる、そんな有難い菩薩がお地蔵様なのです。錫杖はお地蔵様のシンボルでもあります。本来観音様は錫杖を手にしていないのですが、長谷観音は右手に錫杖を持っています。それだけ衆生に近い位置にいらっしゃる観音様ということなのでしょう。

国分寺本堂の法話

参拝客がどんどん本堂内へと吸い込まれていきます。

私が本堂内へお邪魔した時には、既に満席状態でした。しばらくすると、お寺の方が新たに椅子を用意して下さり、かなり前の方へ座ることになりました。

国分寺境内

本堂前の坐像。

円光背を背にするこちらの御方は弘法大師様でしょうか。

国分寺は浄土宗のお寺です。本堂内にも弘法大師様が祀られていました。

大和国国分寺

大和国分寺の社号標。

正式名称を「勝満山満法院(しょうまんざんまんぽういん)国分寺」と言うようです。

御本尊は阿弥陀如来坐像で、両脇侍に観音・勢至菩薩が坐しています。

大和国分寺

毎月10日に念仏会が行われているようですね。

1月と8月は休会されますが、定期的に念仏の集まりがあります。14時におつとめ、15時から法話とのご案内です。

本日の法話前にもご住職を中心としたおつとめがありました。南無阿弥陀仏の名号を聴いていると、自然と心が和みます。今回のご住職の法話の中で印象に残った言葉があります。仏法僧とよく言いますが、そこに縁を足した仏縁、法縁、僧縁というキーワード。

何気なく訪れた国分寺ではありましたが、確かに今日は招かれたのかもしれない。そう感じさせてくれる法話でした。縁を結ぶためには、その原因となるものが必要なのでしょうが、知らず知らずのうちに蓄積されていたのかもしれませんね。

何かのチカラに導かれるように訪れた国分寺・・・。

金台寺

その北隣には金台寺(こんたいじ)というお寺がありました。

蓮如上人ゆかりのお寺なんだそうです。

国分寺の軒丸瓦

国分寺山門脇の軒丸瓦。

屋根瓦に巴紋が入っていますが、おそらく国分寺の寺紋なのでしょう。

国分寺の扁額

山門に掲げられる扁額。

国分寺と言えば、やはりどうしても東大寺を思い出してしまいますよね。

”大和国国分寺” はここ橿原市内にも存在していたのです。

重要文化財仏像特別公開

橿原市市制60周年記念 重要文化財仏像 特別同時公開のビラ。

久しぶりに心地よいお経の声に身を委ねさせて頂きました。

独特のリズムで響き渡る声に、どこかのコンサートホールにでも居るかのような錯覚に陥ります(笑)  決して大袈裟ではありません、何かこう音楽の原点でも見たような気が致します。

国分寺本堂

立派な本堂です。

焼失の憂き目に遭った本堂ですが、雨降って地固まるといったところでしょうか。美しい木目の残る本堂内は、とても居心地が良かったです。

国分寺境内に開花する花

こういう機会は度々設けて頂きたいですね。

市井の仏像は、皆に公開してこそ価値が生まれます。受け取り方は様々ですが、何かを感じて国分寺を後にするのです。そういうことの積み重ねが、より一層縁を深くしていくものと思われます。

大和国分寺

泥中に咲く蓮ですね。

仏像拝観の醍醐味は、小さいお寺さんの中にこそある。そんな風に思います。東大寺や長谷寺、室生寺といった大きな観光寺院の仏像拝観も意義深いものですが、それ以上に私たちの身近に存在する仏像にもっと興味を抱いてもいいのではないでしょうか。

神社には「産土神」という身近な神様がいます。その土地で育ったなら、やはりその土地の仏像も拝んでみたいものです。

国分寺の駐車場はありませんので、公共交通機関を使ってのアクセスをおすすめ致します。

<同一タグ記事>