日本のダリ現る!大神神社奉納絵画『大物主命』

6月21日夏至の日に、大神神社に於いて記念すべき絵画奉納奉告祭が催されます。

画家の堀内亜紀さんの作品『大物主命』が、晴れて三輪山を御神体とする大神神社に奉納されます。

ささゆり園と『大物主命』

ささゆり園に咲く御神花と『大物主命』。

絵の作者の堀内亜紀さんなのですが、実は私の中学時代の同級生なのです。今回の絵画奉納奉告祭では、「オオモノヌシ」をキーワードにした記念講演会も開催されます。その演者の方も当館にご宿泊頂く御縁を頂きました。メモリアルデーを前に、堀内さんのアトリエにお邪魔して参りました。

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少彦名命や亀甲墓の原画を鑑賞

堀内さんのアトリエは三輪山麓の聖域・瑞垣郷の中にありました。

窓からは三輪山を仰ぎ見ることができ、その素晴らしい立地が創作の原点になっているのかもしれないと感じさせます。キノコの帽子を被ったようなインパクトのある『大物主命』が前面に押し出されていますが、堀内さんのアトリエにはその他にもたくさんの見所が!絵画に関しては素人目線ではありますが、ここに簡単にレポートしておきます。

少彦名命と久すり道

『少彦名命』と久すり道。

堀内さんの作品の一部はジークレーでも販売されています。原画を忠実に再現したジークレーは必見ですので、絵画ファンの方は是非お求め下さい。

少彦名命は大物主命と共に国造りを行った神様として知られます。大神神社境内でも、磐座神社に祀られていることは周知の通りです。医療や酒造を司る神様でもあり、堀内さんにとっても思い入れの強い神様のようです。数ある堀内さんの作品群の中で、画布に身近な神が登場したのはこの少彦名命が初めてだったと言います。

神話に登場する様々な神様を題材にされていますが、その端緒となったのが『少彦名命』だったのです。この少彦名命は堀内さんの言葉を借りれば、古代中国の伝承に登場する神農(しんのう)さんでもあるそうです。

クローバーを口に咥え、赤ら顔の頭上には角のようなものも見られます。なかなかのイケメンですね。

大物主命と大神神社拝殿

『大物主命』と大神神社拝殿。

今回の主役であるオオモノヌシです。

どこかメルヘンの世界を思わせる不思議な絵画です。大物主は大黒天でもあるわけですが、どうやらそのシルエットが意識されているようです。頭巾を被り、米俵の上に乗っているのが大黒さんですよね。上の絵を見てみると、キノコの笠が頭巾で、米俵が磐座のようなもので表現されているのが分かります。

絵画『大物主命』の原画

堀内さんのアトリエに飾られていた『大物主命』の原画。

本番の絵画奉納奉告祭まで、もうあと一週間を切っています。この場所で原画を見ることができるのもあとわずかです。そんな貴重なタイミングで訪れることができ、とても幸運な一日を過ごすことができました。

絵画『大物主命』の原画

笠の裏のヒダまで見事に描かれています。

よく観察してみると、お顔の両側にも二つの顔が描かれていることに気付きます。堀内さんの解説では、これは三面大黒天とのことでした。なるほど、確かにこれは三面大黒天ですね。大阪の四天王寺で拝観した三面大黒天のことを思い出しました。

大物主命の手にも注目してみましょう。

まるで仏像が印を結んでいるようなポーズを取っています。神仏習合のお姿のようにも見えてきますね。そういう観点で言うと、巨大なキノコの笠も五劫思惟阿弥陀如来のアフロヘアを彷彿とさせます(笑)

見れば見るほど、絵の中に引き込まれて行きます。自分なりの見方で楽しんでみるのもいいのではないでしょうか。そもそも作者の堀内さんは、この絵画を ”自動書記” に近い形で描き上げておられます。何かが降りて来て、筆の赴くままに描いたとおっしゃっていました。この絵を描き終えた数時間後に、あの東日本大震災が起こったと言います。何かを感じさせてくれる絵画ではないでしょうか。

絵画『伏義女媧』の原画

『伏義女媧』の原画。

こちらも、この世に一点しかない原画です。

伏義(ふっき)と女媧(じょか)は古代中国神話に登場する神とされます。私はパッと見た時、日本神話における伊邪那岐と伊邪那美がデフォルメされて描かれているのかなと思ったのですが、どうやらその予想は外れていました。

油彩画とテンペラ画を組み合わせたような技法で描かれています。蛇身人頭の異形の姿が、私の関心を引き寄せます。絡み合った蛇体は交尾を意味しているとも言われますが、どこか神社の注連縄にも通じるものを感じます。

絵画『伏義女媧』の原画

伏義は直角定規、女媧はコンパスを手にしています。

なぜにまた、定規にコンパスなのか?その理由は聞きそびれてしまいましたが、まぁそんな理屈は抜きにして楽しむのが絵画鑑賞の醍醐味ですね。複雑に絡み合いながら伸びる根っこにも、生命のエネルギーを感じます。

コノハナサクヤヒメの原画

こちらは木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)を描いた原画です。

地下にたまったマグマのようなものが赤々と描かれています。ほとばしる地球のエネルギーを感じさせる作品ですね。コノハナサクヤヒメは富士山に祀られている神様のようで、火山と縁の深い神様のようです。

この作品の制作時期も熊本地震と重なるそうです。強いメッセージ性を感じずにはいられません。

絵画『亀甲墓のYONI』の原画

『亀甲墓のYONI』の原画。

女性の子宮へ帰って行くイメージで描かれています。

亀甲墓(きっこうばか)とは、沖縄特有のお墓なんだそうです。最初拝見させてもらった時はタコの姿が想像されたのですが、墓室の屋根が亀の甲羅型をしたお墓だと聞かされました。何モノかが列をなして帰って行くその穴の先には・・・

絵画『亀甲墓のYONIの原画』

そこに描かれていたのは人間の横顔でした!

どこかトリックアートのようでもありますが、眉毛と目が蛇の姿で描かれているのが分かります。細部に至るまで、実に緻密に描かれたアート作品です。くるっと渦を巻いた箇所も、”如意” や ”孫の手”を想像させますね。

絵画『少彦名命』の原画

そしてこちらが、堀内さんの処女作とも言える『少彦名命』の原画です。

額縁の横には大神神社のお札も掲げられていますね。

同級生のよしみで寄せて頂きましたが、原画の持つパワーに圧倒されっぱなしの私(笑) しかも、原作者の堀内さんから直々に絵の解説までして頂いて、大変有意義な時間を過ごすことができました。

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雨宝童子や八咫烏、桜井市にまつわる神様の絵

ひとしきり原画を鑑賞させて頂いた後、お茶を飲みながら絵葉書サイズの写真を手に取材を続けます。

絵画展に足を運ばなければ堀内さんの作品を鑑賞することは出来ないのか?そんな声も聞こえてきそうですが、心配はご無用です。ジークレー(Giclee)としても販売されているそうです。

ジークレーとはインクジェットプリンターで印刷された限定版画作品のことを言います。高精細複製技術により、7万色もの発色が可能となり、より原画に近いタッチを楽しむことが出来ます。堀内亜紀画伯の公式HPにもジークレーの案内が出ていますので、ご興味をお持ちの方は是非問い合わせてみて下さい。

『蛇の神様と卵』

『蛇の神様と卵』。

三輪山に鎮まる大神神社をモチーフにした作品です。

遊び心なのか、羽の生えた蛇も描かれていますね。頭上に卵を載せ、三輪山麓を翔け回っています。山の上には宝珠がアーチを架け、輪宝なのか花火なのか、不思議な花模様が夜空を焦がします。堀内さんのお話によれば、全体の構図は大神神社の宝物収蔵庫に収められた三輪山麓の古地図がイメージされているようです。

狭井神社拝殿と『蛇の神様と卵』

作品を狭井神社拝殿にかざします。

手の届かない美術作品は、やはりこうして手元に置きたいものですよね。手元供養ではありませんが、大切なものを身近に置くことでさらに愛着も深まるというものです。

『雨宝童子』と市杵嶋姫神社

市杵嶋姫神社と『雨宝童子』。

雨宝童子はとても印象に残った絵画の一つです。

長谷寺十一面観音立像の横に祀られていることでも知られる雨宝童子ですが、雨宝童子とはどういう神様なのでしょうか。堀内さんのHPによれば、弘法大師空海が伊勢の朝熊山で感得したと伝えられる、少女の姿をした天照大神なんだそうです。お伊勢参りの際には朝熊山に登ることも信者の慣わしになっています。そんな聖なる場所で、空海が感得した少女姿のアマテラス。

大神神社の山頂には太陽神が祀られています。

古代大和では、三輪山から日が昇って二上山に日は落ちると言われていました。太陽の象徴でもある三輪山、そしてその太陽神・アマテラスは伊勢に祀られる以前に、大神神社の摂社である檜原神社に祀られていたと伝わります。

『雨宝童子』とささゆり

御神花ささゆりとのツーショット。

手にする宝珠からは放射状に光が放たれます。そこに太陽の姿が重なり、ふくよかな表情の雨宝童子を照らします。雨宝童子の美豆良に結われた髪の毛は三輪山をイメージしているのでしょうか?頭上には五輪塔を載せ、優しく微笑みかけます。

難陀龍王

こちらは、難陀龍王(なんだりゅうおう)の絵画です。

雨宝童子と同じく、長谷寺御本尊の脇侍として祀られる神様ですね。

曲がりくねる龍を頭上に頂きます。

大神神社のみならず、長谷寺の神様も題材にされていて、堀内さんの地元を愛する気持ちが伝わって参ります。

『烏族の幾何学模様』

『烏族の幾何学模様』。

桜井市に鎮座する等彌神社をイメージした作品のようです。

そう、ヤタガラスがまるでピラミッドのように君臨していますね。等彌神社で催された奉納絵画展出品のために描かれた作品とのことで、烏と幾何学模様が見事に融合しています。

神武東征の際に、その手助けをしたと伝えられる八咫烏は等彌神社のシンボルでもあります。奈良県有数のパワースポットとしても知られ、「宇宙人」とも称される土偶はつとに有名です。深遠なる等彌神社に意識を合わせて描かれた絵は、どこか宇宙との交信を感じさせる出来栄えです。

『Goddess Green Tara』

『Goddess Green Tara』

観音様の慈悲の涙から生まれたというターラ菩薩が描かれています。足を崩し、今すぐにでも救いの手を差し伸べようとする気持ちが見て取れますね。チベット仏教における母なる神様が見事に表現されています。

『天之御中主神』

『天之御中主神』。

アメノミナカヌシノカミは日本神話における元祖とも言える神様です。天地開闢に関わった神様ですから、その神性はいかばかりのものか想像も付きません。

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大神神社境内を堀内作品と共に散策

堀内亜紀さんのアトリエで原画を楽しんだ後、帰路は大神神社の境内を抜けて行きます。

梅雨の最中ではありましたが、初夏の境内は清々しい ”気” に満ちていました。

磐座神社鳥居と『少彦名命』

磐座神社と『少彦名命』。

ご存知のように大神神社は薬の神様でもあります。儀式殿脇の「久すり道」には薬草が植樹されています。名だたる製薬会社の名前を見ながら階段を上がり、鎮花祭で知られる病気平癒の狭井神社を目指します。その途中、右手に祀られているのが少彦名命を御祭神とする磐座神社です。

磐座神社案内板と『少彦名命』

大神神社摂社の磐座神社。

まさしくこの場所にふさわしい『少彦名命』!

例祭は10月11日とのことですが、どのような祭事なのでしょうか。一度訪れてみたい気もするのですが、10月11日と言えば毎年3連休にも掛かる超多忙な日・・・かと思えば、カレンダーを見ると今年は平日の火曜日です。これはチャンス!是非、今年は磐座神社の例祭を見学してみたいと思います。

『少彦名命』と御神花ささゆり

ささゆり園の中でも少彦名命が輝いて見えますね。

処女作というのは、その作者の全てが詰まっているとも言います。『少彦名命』の次に描いたのが『大物主命』だったそうです。これから先も、数々の作品を世に送り出していくことになるであろう堀内亜紀さん。そんな彼女にとっても、忘れることのできない作品なんだと思います。

『蛇の神様と卵』とささゆり

境内の石垣の間から、時おり顔を覗かせることもある巳さん。

スマホ時代ということもあってか、皆さんここぞとばかりにシャッターを切っておられるようですが、くれぐれもおやめになられることをおすすめ致します。三輪の蛇神を写真に収めてはいけません。心の中にそっとしまっておくのが宜しいかと思われます。

大神神社宝物収蔵庫と『大物主命』

神主さんからはまだ正式な通達がないようですが、この『大物主命』は宝物収蔵庫に収められることになるかもしれません。

拝観料が必要な場所だけに、私もつい応援したくなります。

ささゆりと『大物主命』

お守り授与所で絵葉書として販売されるのもいいですよね。

桜井市のマスコットキャラクター・ひみこちゃんのように着ぐるみデビューも考えられます。あるいはもっと簡単なところで、ストラップとしてお守り代わりに使ってもらうのも妙案です。キモカワイイその姿はインパクト絶大ですよね。

巳の神杉と『大物主命』

大神神社には本殿がありません。

御神体が三輪山そのもので、古代の自然崇拝の形を今に残しています。三ツ鳥居の向こう側は禁足地で、立ち入ることが許されない神域です。目には見えねども ”何か” を感じる所、それが大神神社なのです。

「モノ」とか「コト」という音の響きには不思議なものを感じます。

具象化されていない「モノ」や「コト」という言葉。その最たるものが「オオモノヌシ」なのかもしれない・・・そんな風に感じられるのです。

『亀甲墓のYONI』とささゆり

亀甲墓の絵画にも、実に霊妙なパワーが感じられます。

女性の子宮へと帰って行く・・・これほどの原点回帰があるでしょうか。様々なシーンで生活している私たちですが、常に基本に立ち返ることの大切さを気付かせてくれます。

俗説ではありますが、大黒天は男性の性器を表しているとも言われます。大黒天の後ろ姿のシルエットが、そっくりそのまま男性器を模しているとする考え方です。

大神神社儀式殿と『大物主命』

なるほど、そう言われてみればそうなのかもしれません。

リアルな表現で誠に申し訳ありませんが、キノコの笠が亀頭で、磐座のような膨らみが陰嚢を思わせます。原型の大黒天なら頭巾が亀頭で、米俵が陰嚢ということになりますね。何はともあれ、一組の男性と女性から始まったこの世の中です。世界中に性崇拝の歴史は刻み込まれているわけで、大黒天をそのような角度から見てみるのも一興なのかもしれません。

絵画『大物主命』とささゆり

キャラクターとして売り出す際には、「オオモノヌシちゃん」でいいのでしょうか(笑)

原作者の堀内さんと談笑しながら話し合いましたが、皆さんいかがでしょう?

大神神社二の鳥居と『大物主命』

太陽のパワーが一年で最も強い夏至の日に火蓋は切って落とされます。

小野満麿氏と半田広宣氏による記念講演会も楽しみですね。

絵画奉納奉告祭のチラシから、演者からの挨拶文を引用しておきます。

居住まいを正しつつも、内容は神道の範疇に留まることなく、生物学や言語学から数理や惑星天文学、はたまた素粒子物理や哲学思想の最先端から立体幾何学その他にまではみ出して、現在の人間精神を見据えながら、長年の思索と研究を通して今後の未来を語ります。

記念講演会は一部と二部に分かれており、どちらも会場は大礼記念館です。

一部(9時30分~12時)が小野満麿氏の記念講演で、「大物主と呼ばれているところのそう呼ばれる前のそれ」・・・日本人と日本語の過去と現在から未来を見る、です。

二部(14時~17時30分)は半田広宣氏の記念講演で、「ヌーソロジーから見る大物主と日本の霊性」・・・認識の新しい地平を切り開いて形にして示す、となっています。参加費は無料ということですので、参拝ついでに足を運ばれてみてはいかがでしょうか。

<堀内亜紀『大物主命』絵画奉納奉告祭>

  • 日時 :6月21日(火)の13時~14時
  • 会場 :大神神社拝殿(献饌~祝詞奏上~神楽奉奏~玉串奉奏~撤饌~記念撮影)
  • 参加費:無料

<堀内亜紀画伯のSNS>

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