8本脚の蝶の謎@東大寺大仏殿

東大寺大仏殿の蝶はなぜ8本の脚を持っているのか?

かねてからの謎ではありますが、はっきりとした定説はなかなか見つからないようです。

東大寺大仏殿の八本脚の蝶

東大寺大仏殿の八本脚の蝶

分類学上、昆虫の脚は6本とされます。小学生時代の理科の授業を思い出しますが、頭・胸・腹の3つの部位に分かれる昆虫。その脚は胸の部分から6本伸びています。だとすれば、東大寺の大仏様前の花瓶にとまる蝶は昆虫ではないのか?そういう疑問が湧いてくるわけですが、やはりこれは神格化された想像上の生物と言っても過言ではないでしょう(笑)

先っぽが耳たぶのように伸びる蝶の翅(はね)。

翅の先に空いている孔は全部で6つですが、鋸歯文とも採れるノコギリ状の山は8つ確認できます。脚の本数と同じく、「末広がりの八」ですね。

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平家の怨霊を鎮める蝶を意味するのか

東大寺の御本尊・毘盧遮那仏坐像の御前に、蓮の活けられた花瓶が飾られています。

その花瓶の両脇に、向き合うようにして一対の蝶がとまっています。

東大寺大仏と八本脚の蝶

東大寺大仏と8本脚の蝶。

見れば見るほど不思議です。

思い起こせば、東大寺大仏殿は源平の戦いの際の治承4年(1181)に平重衡の南都焼討に遭っています。そして、その桓武平氏の家紋が揚羽蝶なのです。平家といえば蝶、美しく舞う蝶が平家のシンボルなのです。

奈良時代より蝶は大変人気があり、様々な文様に使われていました。

正倉院御物の中にある金銀絵箱や調度品の数々にも蝶の姿が見られます。鎧甲などにも印されていた蝶は、出世を意味する吉祥文様ではなかったかと思われます。蛹(さなぎ)から脱皮するその生態が、一皮むける成長や立身出世をイメージさせたのではないでしょうか。

大仏殿修復に当たって、そのお祝いに納められたと伝わる蝶。本来であれば、華瓶(けびょう)の取っ手には象の鼻や龍が意匠として使われます。それなのに、なぜ大仏殿には蝶が使われているのか、その謎を解く鍵が南都焼き討ちにあるのかもしれません。

東大寺大仏殿の蝋燭

大仏前に奉納されたロウソク。

しかしながら、ここで留意しておかなければならないことは、平家に伝わる家紋の蝶は6本脚であるという点です。東大寺大仏殿の蝶のように8本脚ではないのです。益々深まる8本脚の蝶の謎・・・。

8本脚の蝶の羽

背後から蝶を撮影。

どうやら翅は二重に取り付けられているようです。花瓶にとまって翅を休める蝶は何を想うのでしょうか。二度と火災に遭うことのないようにお祈りしているのでしょうか。

東大寺大仏と花瓶の蓮

華瓶から仏教を象徴する蓮がにょろっと伸びています。

蝶の家紋にも色々なものがあります。揚羽蝶以外にも、浮線蝶、二羽の蝶が向き合う様子を模った向い揚羽蝶などがよく知られます。華瓶を挟んで向き合う二羽の蝶を見ていると、ますます家紋との関連性が感じられます。

大仏殿擬宝珠と中門

大仏殿の擬宝珠を通して中門を望みます。

8本の脚の意味は、縁起を担ぐ末広がりなのか?算数字の8を横に倒せば、無限大を表す∞にも通じます。長きに渡って東大寺の繁栄を祈願するために、末広がりを意味する「八のパワー」を蝶の脚に注ぎ込んだのかもしれません。

東大寺南大門

東大寺南大門。

いつも観光客で賑わう東大寺の玄関口です。

八本脚の蝶の謎を解く際、神武伝承で知られる宇陀市の八咫烏神社が一つのヒントになるのかもしれません。八咫烏神社に祀られるヤタガラスの脚は3本あります。2本ではなく3本もあることから、これも明らかに神格化された烏であることが伺えます。

異形の神様

興福寺に伝わる阿修羅像も異形であることに変わりはありません。そのシュールな姿が人気を呼び、アシュラーと称する阿修羅ファンまで登場したのは記憶に新しいところです。

東大寺大仏殿の8本脚の蝶

異形の蝶が大仏様の前に居座ります。

邪悪なものの侵入を防いでくれているのかもしれません。大仏様と蝶、直接的には無関係のもの同士が、何か切っても切れない深い縁で結ばれているような気がして参ります。

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