ゆかしいの語源

奥ゆかしいという言葉の語源はどこにあるのでしょうか。

「ゆかしい」は「行く」の未然形である「ゆか」に、形容詞化の「し」を加えた言葉です。その語源の意味するところは、心が行きたい状態になるということになります。奥ゆかしい花に心を魅かれ、奥ゆかしい人に恋をする。誰しも経験したことのある心情ではないでしょうか。

大神神社のささゆり

大神神社の笹百合

下向き加減に咲くささゆりには、奥ゆかしいという表現がよく似合います。

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上品で惹き付けられる感じが「床しい」

漢字で書けば「床しい」となりますが、これはあくまでも当て字です。

語源的に解釈するなら、「行かしい」となるはずです。でも、「行かしい」ではどことなく現実的で言葉の奥行きが感じられません。「床しい」とする方が、どこか現実を離れたはかなさや永遠性が感じられます。床の間ととこしえがリンクしていることを以前の記事でも書きましたが、そのこととも関係するのでしょうか。

十二単の婚礼衣装

十二単の婚礼衣装。

これほどゆかしい立ち姿には、なかなかお目にかかれるものではありません。

ゆかしいという表現には、「懐しい(ゆかしい)」という漢字が当てられることもあります。なんとなく懐かしく、慕わしい感じを抱いたときに使われます。過去への回帰、時間軸の移動にも「ゆかしい」という言葉が使われていることが分かります。

大神神社の結婚披露宴

結婚披露宴会場の料理旅館大正楼。

なんとなく知りたい、見たい、聞きたい。好奇心を心地よく刺激する奥ゆかしさ。

奥行きの感じられる宿であり続けたいと願う私たちにとっては、これからも大切にしていきたい言葉の一つです。

氷室神社の枝垂桜

氷室神社の枝垂桜。

春先の枝垂桜にも、自然とゆかしい感情が湧いて参ります。

山路来て 何やらゆかし すみれ草

松尾芭蕉の俳句にも残されている「ゆかし」という言葉。

心が何となくそこへ行きたい状態になる、そんなシチュエーションを古語の世界では「憧る(あくがる)」とも表現しました。魂が肉体から離れることを意味し、落ち着かない様子を言い表しています。現代語の「憧れる」や「憧れ」の元になった言葉ですね。

古語には「ゆかしがる」という表現も見られます。~したいと思う、見たがる、聞きたがるなどの意味で使われる他動詞です。

「ゆかしがる」と「あくがる」の「がる」は同じ意味を持つ「がる」なのでしょうか?古語辞典を紐解くと、「あくがる」の「あく」は「所」で、「がる」は「離る(かる)」を意味しているのではないかと解説されています。

まだそこへは行っていない、けれども行きたい。

そんな思いを引き起こさせる「ゆかしい」という言葉の深みを、今一度噛み締めてみたいと思います。

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