橿原市の十市城跡

山城に対する平城。

天理市の山城・龍王山城に対し、橿原市の十市城(とおいちじょう)は平地に築かれたお城として知られます。

三輪に住む私にとって、昔から十市(とおいち)という地名には親しみがあります。大和八木方面へ出るためには、いつも県道152号線の大三輪十市線を使っていました。中和幹線が出来てからは大三輪十市線を通ることも少なくなりましたが、今でも記憶の中に残る十市という地名には敏感に反応します。

十市城跡

橿原市十市町に佇む十市城之跡碑。

畑と水田に囲まれた場所にひっそりと石碑が建てられていました。お城の痕跡はどこにも見られず、ただ石碑があるのみですが、その寂しさが返って往時の繁栄を偲ばせます。

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寺川近くの十市城跡へアクセス

十市城跡には駐車場がありません。

どこに車を停めておこうか迷った挙句、十市城跡近くに御縣神社の一つに数えられる十市御縣座神社があることに気付きます。神社脇のわずかな駐車スペースに車を停め、徒歩で十市城跡へ向かうことに致しました。

奈良交通大門橋バス停

その前に一旦、大三輪十市線に出て大体の場所を把握します。

ここは奈良交通大門橋のバス停ですね。東へ向かう次のバス停は福祉センター「やわらぎの郷」で、さらに「太田市町」へと続きます。大三輪十市線のすぐ南を寺川が流れています。

十市御縣座神社

十市御縣座神社。

訪れた当日は、拝殿奥の木を伐採する作業が行われていました。

十市

十市城跡へ向かう道中の電柱。

「十市」のプレートが巻かれています。

寺川流域の十市は、大和三山・耳成山の北方に位置しています。「和名抄」には止布知(とふち)とあるようです。トフは低地を意味する地形語のタヲ(低地)のことです。市(チ)は交通の要所を意味するチマタのチとされます。つまり、十市エリアは低湿地帯ということになります。

十市城跡へのアクセス道

民家の建ち並ぶ旧道を歩きます。

この辺りは昔風情を感じさせる場所で、歴史散策にはぴったりですね。

信長山常願寺

道中で見つけたお寺。

信長山常願寺と書かれています。

十市氏と言えば、室町時代末期・天文年間の十市遠忠の代に最盛期を迎えています。龍王山城で知られる十市遠忠ですが、それ以降は幾多の戦乱をくぐり抜けて、1575年(天正3)に織田信長の配下となっています。

信長山常願寺

寺紋の下に、常願寺の山号である信長山が記されます。

織田信長ゆかりのお寺なのでしょうか?天理市柳本町の伊邪那岐神社境内には、織田信長を祭神とする建勲神社が祀られています。桜井市の織田小学校エリアも織田氏の影響を感じさせる場所です。

十市界隈にも織田氏の影が感じられることに、ちょっとした驚きを感じます。

十市城跡へのアクセス道

ここの角を右に曲がると、十市城跡へアクセスします。

抜けるような青空が広がり、真夏を感じさせるような昼下がり。いよいよ目的地の十市城跡へと辿り着きます。

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東に三輪山を望む十市城跡

十市城跡の周りは田植えを終えたばかりの水田が広がっていました。

周囲を遮る高い建物は何もなく、カンカン照りの直射日光を頭上に浴びます。

十市城跡と水田

水田の向こうに十市城跡を望みます。

中世大和における平城の十市城。

ここは十市氏が鎌倉時代後半から江戸時代にかけて居城した場所と伝えられます。

十市城跡

西から東の空を望みます。

遥か東方には三輪山が聳えています。

十市城跡の西には多神社、屋就神命神社、子部神社などが鎮座しています。十市城はレイラインとも称される「太陽の道」を意識して築城されたのでしょうか。ふとそんな疑問が湧いて参りました。

十市城跡

「土地改良総合整備事業完成記念」の石碑が建ちます。

十市町による土地改良が行われた場所のようです。

十市城跡

十市町旧集落北部に、一辺約70m四方の微高地があります。

ここを中心部分(主郭)として城域が広がっていたものと思われます。

三輪山

東の方角に三輪山を望みます。

三輪山は大和において日が昇る山とされます。歴史的に重要な寺社や遺跡が、三輪山と多神社を結ぶ北緯34度32分のライン上に位置しているとも言います。数か月前に訪れた姫皇子命神社も太陽の道を感じさせる場所に鎮座していました。

十市城跡

果たしてライン上なのか?

そのあたりは定かではありませんが、十市氏の代名詞にもなっている龍王山城は北緯34度33分に位置しています。1分のずれはあるものの、太陽の道を意識させるには十分ではないでしょうか。

桜の名所・大和郡山城や紅葉の名所・高取城に比べれば、明らかに地味な城跡です。

十市城という名前を知る人も少ないことでしょう。しかしながら、そんな歴史の足跡を確かめてみるのも奈良旅行の楽しみの一つです。

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