裏方の奉行所を知る『おん祭と春日信仰の美術』

今年も春日若宮おん祭の季節がやって参りました。

奈良の一年を締め括る華やかなお渡り式に先立ち、奈良国立博物館に於いて特別陳列『おん祭と春日信仰の美術』~特集 奈良奉行所のかかわり~が開催されます。特別展示の期間は12月10日(土)~来年度の1月15日(日)までとなっています。恒例の企画展で、おん祭の歴史と祭礼のみならず、春日信仰に関する美術も紹介されるビッグイベントです。

おん祭と春日信仰の美術

2016年度の『おん祭と春日信仰の美術』。

奈良国立博物館の観覧料は一般520円、大学生260円となっています。なお、お渡り式当日の12月17日は全館無料という嬉しいサービスが付いています。また、成人の日(1月8日)は新成人の方に限り全館無料です。

最終日の1月15日には、氷室神社文化興隆財団代表理事・大宮守友氏による公開講座「奈良奉行と春日若宮祭礼」が予定されており、おん祭フリークにとっては盛り沢山の内容です。

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風流行列の絵巻物が見所

今年の春日若宮おん祭は881回目を数えます。

連綿と受け継がれてきた奈良を代表する伝統祭事なわけですが、その始まりは保延2年(1136)とされます。平成28年度の今年は西暦2016年に当たります。2016-1136=880 で、確かに今年が第881回目です。改めてその歴史の深さに驚き、毎年欠かすことなく行われてきた伝統の重さに感じ入ります。

馬長児と巫女

馬長児(ばちょうのちご)。

笠の上には山鳥の尾が立ちます。

シュッとしていて格好いいですよね。馬長児はお渡り式の第六番目に騎乗姿で登場し、その後ろには笹竹を手にした従者が付き従います。お渡り式直前の談笑シーンですね(笑)

春日若宮御祭礼絵巻と春日祭礼之図

チラシの裏側に横長の絵巻が案内されていました。

上が春日若宮御祭礼絵巻で、下が春日祭礼之図

華やかな風流行列の様子が克明に描かれています。春日祭礼之図の方には、「猿楽」や「馬長児」といった文字が鳥居近くに見られます。ちなみにチラシ右上の絵は春日鹿曼荼羅(東九条春日講)で、春日信仰の美術品として知られます。

今回の特別陳列では、裏方の奉行所に光が当てられています。

おん祭を支え続けた奈良奉行所ですが、今の奈良女子大学の場所にあったそうです。普段は盗賊の取り締まりや寺社の監視に当たっていました。時の江戸幕府はおん祭の監督を奉行所に任せ、それまで興福寺が出していた費用の一部を負担したそうです。

巫女と馬

巫女が乗馬した瞬間を捉えます。

男性の法被の背中には春日大社の御神紋がデザインされていますね。

江戸時代のおん祭を支えたという奈良奉行所。祭事とはどのような関係性を保っていたのでしょうか。おん祭には馬が使われますから、奉行所にとっては得意分野だったのかもしれませんね。

縦約7cm、横約10cmの豆本・「春日若宮祭礼手控(てびかえ)」を見ると、儀式の流れや配置図が細かく書き込まれています。降雨や日暮れ時の対策に至るまで、奉行の補佐役だったという与力の腐心がうかがえます。

春日若宮おん祭の大名行列

お渡り式第十二番の大名行列。

お渡りの最後の方に登場する威勢のいいお兄さんたちです。

おん祭のお渡りは平安時代以来、その時々の風俗や流行を採り入れながら続けられてきました。今回の企画展では、時代時代の風俗にも注目してみたいと思います。長い歴史の中には、微調整も少なからずあったことでしょう。どんな分野においても伝統と革新は共存しますからね。

奉行所の見取図・「御役所絵図」(1767年)なども見所の一つです。そこには、取り調べをした部屋などに加え、おん祭の行列で使う槍160本を収めた道具蔵も書かれているそうです。

本年度のお渡りは、残念ながら仕事の予定が入っています。初日に行われる大宿所祭なら見学可能かもしれません。いずれにせよ、今年も少しだけおん祭に触れてみようと思います。

<奈良国立博物館の関連情報>

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