特別史跡キトラ古墳を阿部山に見学

高松塚古墳と共に、石室内に描かれた四神壁画で有名なキトラ古墳。

キトラ古墳は昭和58年(1983)11月7日に、石室内の彩色壁画に玄武が発見されたことを契機として、世間にその名を知られることになりました。壺阪山駅近くの子嶋寺参拝の日。子嶋寺から徒歩圏内にあるキトラ古墳を久しぶりに訪れてみることに致しました。

キトラ古墳

整備中のキトラ古墳。

キトラ古墳の壁画は現在、明日香村の仮設施設において修理中です。

壁画の描かれた漆喰が崩落寸前だったため、文化庁によって2010年までに全ての壁画の剥ぎ取りが終了しています。壁画の修理が完了すると、その後はどうなるのか?気になるところではありますが、心配はご無用です。キトラ古墳の体験学習館が建設される予定なのです。

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明日香村阿部山のキトラ古墳

国土交通省によって整備が進められる「国営飛鳥歴史公園キトラ古墳周辺地区」。

明日香村には高松塚周辺地区、甘樫丘地区、石舞台地区、祝戸地区など、古代の歴史舞台を楽しめるエリアが用意されていますが、そこに新たにキトラ古墳周辺地区が加わります。新たに建設予定のキトラ古墳体験学習館も、国営飛鳥歴史公園キトラ古墳周辺地区内にあり、その壁画が保存・展示される予定です。

キトラ古墳の墳丘

シートが被せられたキトラ古墳の墳丘。

埋め戻された石室がこの中に保存されているようです。

キトラ古墳の墳丘の形状は、二段築成の円墳です。建設中の体験学習館の南側に位置している墳丘ですが、北側の斜面を削り込んで墳丘を造成する整備も進められているようです。

亀虎橋

亀虎橋。

キトラ古墳の近くに架かる短い橋です。橋を渡った向こう側には、高取町観覚寺の子嶋寺や光永寺(人頭石)があります。亀虎橋という名前から、いかにもキトラ古墳が間近であることを窺わせます。四神壁画でおなじみですが、北の守護神が玄武(亀)で西の守護神は白虎(虎)です。

明日香村阿部山

明日香村阿部山と案内されています。

かめバスの停留所にもなっている「阿部山」ですが、高市郡明日香村の大字として知られます。延久2年(1070)の「興福寺坪付帳」に見える中世の阿部山庄とされます。その旧名は「阿保山」であったとも伝えられます。

そもそも、キトラ古墳の名前の由来ですが、北浦(阿部山集落の北川)がキトラに転訛したのではないかとする説があります。近接地の小字北浦が訛ってキトラになったというのです。俄かには信じがたい由来説ですが、古語における「浦」の意味を考えてみれば、一段と真実味を帯びてきます。

甘樫丘の麓に豊浦寺跡があります。

明日香村の大字でもある豊浦の「浦」は飛鳥川の曲流地を表しています。つまり、「浦」という字は裏表の裏ではなく、深く入り込んだ地形を意味しているのです。キトラ古墳にアクセスしてみれば分かりますが、この辺りも確かに深く入り込んだ地形を感じさせます。

整備中のキトラ古墳

工事中のキトラ古墳周辺。

ショベルカーが見えていますね。

キトラ古墳の石室

キトラ古墳石室内の写真が掲示されていました。

向こうに見えるのは、四神壁画の玄武ですね。蛇が亀に絡まり、北の方角を守っています。

休憩中の工事関係者の方にお話を伺いながら、キトラ古墳の墳丘近くへと足を伸ばします。

キトラ古墳の案内板

墳丘近くまで来ると、「仮設通路へ迂回願います」と書かれた案内板がありました。

どうやらこの先は、関係者以外立入禁止のようです。

かめバス停留所の阿部山

振り返ってみると、かめバスの停留所がありました。

明日香村阿部山と書かれています。

かめバス路線図

かめバスの路線図です。

近鉄飛鳥駅→緑ヶ丘→吉野ストア→阿部山→大根田→栗原→檜前→健康福祉センターの間を往復循環しているようです。阿部山の隣の停留所に吉野ストアと案内されていますが、国道169号線沿いにあるスーパーの名前ですね。

キトラ古墳被葬者とキトラ天文図

キトラ古墳の被葬者は誰なのか?

毎度話題に上る案件なのですが、はっきりとしたことは不明のままです。

日本の国の基礎を築いた天武天皇の第一皇子・高市(たけち)皇子、あるいは側近の高官の可能性が高いと言われます。また、その出土品の状況により、高松塚古墳の埋葬者よりも身分の低い人が埋葬されているのではないかと推測されます。阿部山の地名から、右大臣の阿倍御主人(あべのみうし)がその被葬者ではないかと考える人もいるようです。

諸説紛々としていて定説が無い状況ではありますが、キトラ古墳は被葬者云々よりも、その躍動感にあふれる四神像に注目が集まる古墳と言えるのではないでしょうか。

キトラ古墳の仮設通路

キトラ古墳周辺の仮設通路に入ります。

舗装された通路の両側にガードレールが敷かれています。

キトラ古墳の仮設通路

石垣も見られますね。

建設予定の体験学習館は、地上1階・地下1階の構造になるようです。

地上1階には壁画保存管理施設が設置される予定です。併せて副葬品など古墳出土品を保存管理する出土品保管室や、壁画を見学する展示室などが配置されます。

キトラ古墳の溜池

溜池?のようなものも見られました。

キトラ学習館の地下1階には、古代人の世界観が再現されます。

円墳であるキトラ古墳の形に似せた円形の部屋が造られ、天井には大きな天文図が配置されます。キトラ古墳の見学者に、石室内部へ入って行くイメージを持ってもらうための施設のようです。併せてキトラ古墳が辿って来た歴史も紹介される予定で、まさしくキトラ古墳の全てを臨場感たっぷりに体験できる施設となります。

キトラ古墳の仮設通路

完成が待ち遠しいですね。

来年の平成28年度中には完成を見る予定です。

高松塚古墳の四神壁画には、唯一朱雀が欠けています。南の方角を守護する朱雀を見ることのできるキトラ古墳は、それだけでも貴重です。キトラ古墳の朱雀の体には朱色の絵具が塗られています。ぼかしを採り入れた隈取り技法で着色され、立体感が醸し出されています。星宿図も実に精密で、北朝鮮の平壌から見上げた星空が描かれているのではないかとする説もありました。昨今の天文学者らの分析によれば、朝鮮半島ではなく中国の長安や洛陽から見上げた星空ではないかとする説も浮上しています。

キトラ古墳

7世紀末から8世紀初めの終末期古墳とされるキトラ古墳。

被葬者のみならず、謎を呼ぶキトラ天文図

石室の天井中央に、星座や黄道などを表した本格的な天文図が描かれています。太陽や月も描かれ、大宇宙を感じる空間が広がります。金箔で68個の星座が描かれ、北極星を中心とした天体運行を、三重の同心円(内規、赤道、外規)や中心のずれた円(黄道)で示しています。キトラ天文図は現存する世界最古の天文図であり、世界中から注目を集めています。さらには、高松塚古墳には見られない獣頭人身十二支像も見所の一つとなっています。

キトラ天文図の陶板レプリカが、今秋の飛鳥資料館特別展で展示されます。

キトラ古墳よりも簡略ではありますが、高松塚古墳の星宿図の実物(国宝)も明日香村修理施設に於いて初公開される予定です。高松塚古墳の星宿図見学を希望される方は、文化庁ホームページで発表される応募方法に従って応募する必要があります。

キトラ天文図の複製が展示される飛鳥資料館の特別展「キトラ古墳と天の科学」が今から待ち遠しいですね。

数年ぶりに訪れたキトラ古墳でしたが、来年への期待を抱かせる見学記となりました。

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