元興寺かえる石と豊臣秀吉

蛙は何かと縁起のいい動物です。

待ち人帰る、お金が返る等々の言葉に掛けられ、昔からゲン担ぎに使われていた節があります。子守明神の名で親しまれる率川神社にも蛙石がありましたが、世界遺産の元興寺境内にも蛙石が佇んでいました。

元興寺かえる石

元興寺のかえる石。

その扁平な形状は、確かに蛙の姿を想像させます。境内の北側で本堂(極楽堂)の方を向いています。かつては殺生石と怖れられたそうですが、元興寺に移されてからは縁起物の石として崇められています。安住の地で十分に供養されたのかもしれませんね。

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大阪城伝来の自然石

元興寺のかえる石は、元々この場所にあったわけではありません。

かつては太閤秀吉に大切にされ、大阪城にあったものなのです。なぜにまた秀吉はこの石を愛してやまなかったのか、その理由は定かではありませんが何かを感じさせる石であることに違いはなさそうです。

かえる石供養

蛙石供養

私が元興寺を訪れたのは、ちょうど7月7日のお昼過ぎでした。毎年7月7日の午前11時から境内北庭に於いて蛙石供養が執り行われているようです。そんなことなど知りもせずに、たまたま蛙石と出会うことになりました。かえる石の四隅には結界が張られ、御前には祭壇が組まれています。おそらく通常拝観の際には見ることの出来ない光景ではないでしょうか。

元興寺かえる石の案内板

かえる石(大阪城の蛙石)の案内板。

江戸時代の奇石を集めた『雲根志』に載せられている大阪城の蛙石である。河内の川べりにあった殺生石だった様だが、後に太閤秀吉が気に入って大阪城に運び込まれたという。淀君の霊がこもっているとも云い、近代には乾櫓から堀をはさんだ対岸隅にあった。大阪城にあった頃は堀に身を投げた人も必ずこの石の下に帰ると言われた。ご縁があって、この寺に移され、極楽堂に向かって安置された。

福かえる、無事かえるの名石として、毎年7月7日に供養される。

奇石の情報を集めた『雲根志』なんていう書物が存在していたんですね。

雲根(うんこん)とは石の異称です。雲は石に触れて生じるとの説に基づくようです。つまり、ぷかぷかと空に浮かぶ雲の根っこを見てみれば、そこには石があるというイメージでしょうか。自然界をつなぐ面白い考え方ですね。それにしても、那須湯本温泉の殺生石(せっしょうせき)であれば有毒ガスの影響が考えられるのですが、河内の川べりにあったという石がなぜ殺生石だったのでしょうか。その謎は深まるばかりですね。

元興寺かえる石

ロウソクの蝋が垂れて固まっています。

大阪城の堀に身投げした人が皆、この石の下に吸い寄せられたと云います。大阪城落城の際には、淀君の亡骸をかえる石の下に埋めたという伝説も残ります。紆余曲折を経てこの地にやって来た蛙石。元興寺に移された後、極楽堂に向かって誓願を立てることになります。

極楽堂には御本尊の智光曼荼羅が祀られています。仏の世界に触れた蛙石に何かの変化が生じたことは想像に難くありません。

元興寺の桔梗

元興寺の浮図田に咲く桔梗

数年前に比べると桔梗の花に勢いがないという声も聞かれますが、今年は順調な滑り出しなのではないでしょうか。

元興寺のかえる石供養

極楽堂、禅室を右手に見ながら境内の西側へ回り込みます。迂回してしばらく東へ進むと、かえる石が供養された場所へと出ました。

今はまだ、蛙石供養が終わって間のない時間帯です。

馬道と萩

左手が極楽堂(本堂)、右手の建物は禅室です。

僧坊としてつながっていた建物を分割したようです。この真ん中の通りは馬道として利用されていたのかもしれませんね。

元興寺かえる石と五穀

蛙石供養では、焼香の後に五穀の入った水を石に掛ける慣わしです。

石の表面を見てみると、確かに細かい粒が確認できます。かえる石の手前には、人工石の蛙石も置かれていますね(笑)

元興寺かえる石の結界

結界の竹笹に、蛙の手を模したような布が掛けられていました。

梵字に経文が記されているのでしょうか。

かえる石供養

大根、人参、胡瓜、茄子のお供え物。

丸ごとの野菜が中高に盛られています。

元興寺かえる石

かえる石と浄財入れ。

お隣の中国では、「月にガマガエル」も一つのセットとして考えられていたようです。

日本では「月にウサギ」がお決まりのコンビですが、がま蛙もその中に割って入るようです。ガマガエルは水の精で、雨を降らせるために月に居ると信じられていたそうです。蛙、雨、田圃(たんぼ)は連想ゲームのように自然とつながっていきます。古来より稲作文化の根付いていた日本に、蛙が自然と溶け込んでいっても不思議ではありませんね。

元興寺本堂と萩の葉

これは萩の葉です。

秋になると、境内のあちこちで萩の花が開花します。

そう言えば、吉野の金峯山寺に伝わる蛙飛び行事も7月7日に行われます。大和高田市奥田にある弁天池の蓮の花を蔵王権現に供える法要ですが、蛙のユーモラスな姿が印象に残る行事として知られます。七夕の7月7日と蛙には、何か深い関係があるのかもしれません。

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