長谷寺の閼伽井

長谷寺本坊前に佇む閼伽井。

閼伽井とは閼伽(あか)の水を汲む井戸のことですが、閼伽は功徳水とも言われる清浄の水を意味しています。

長谷寺の閼伽井

真言宗豊山派総本山・長谷寺の閼伽井。

本坊門前に咲く御衣黄桜や牡丹の近くにひっそりと佇んでいます。

閼伽とは梵語(argha;arghya)の音訳で、供養や功徳を意味します。仏に捧げる供え物、特に水や花のことを言います。清浄な水を入れた容器なども閼伽と呼ばれることがあります。

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灌頂に用いられる閼伽井

長谷寺の閼伽井は、灌頂(かんじょう)などの重要な儀式法要の際に使われます。

私たちが普段お墓参りでよく行う、墓石に水を注ぎかける行為も「灌頂」と言ったりしますが、この場合は真言宗における灌頂です。

「灌頂」という言葉を広辞苑で引いてみました。

一・インドで国王即位の時、頭頂に四大海の水を注いだ儀式。
一・法王子の灌頂。九地の菩薩が十地に登るとき、諸仏の智水を頂に注ぐ儀式。
一・秘密灌頂。密教で、阿闍梨より法を受けるときの儀式。蜜灌。

これらの他にも雅楽の世界では、秘曲を伝授することを灌頂と言うようです。

どうやら厳しい修行の後、さらなる高みへの入口付近に待ち受けているのが灌頂という儀式ではないかと思われます。

長谷寺の閼伽井

長谷寺の閼伽井前に説明書きがありました。

灌頂(かんじょう)などの重要な儀式法要に用いる清浄(しょうじょう)な水(閼伽(あか))を汲む井戸です。
閼伽は梵語(ぼんご)(古代印度のことば)のアギャという音を写した言葉です。

長谷寺の牡丹

長谷寺本坊に咲く牡丹。

全国各地に赤井さんという苗字の方も数多くいらっしゃるのではないでしょうか。

赤井という姓のルーツを辿れば、閼伽井に行き着くと聞いたことがあります。真偽のほどは定かではありませんが、仏様に備える清浄な水という点では幾分納得がいきます。なぜなら、赤や朱には古来より魔除けの意味が込められていました。古墳から出土する棺には、朱塗りのものが数多く見受けられます。赤井と閼伽井、どこか類似点が見出せるような気が致します。

長谷寺登廊

長谷寺の登廊。

登廊脇の柱に、面白い形の接合材が見られますね。どこか御猪口に似ていなくもありませんが(笑)、なるほど、これならお互いに外れることはないのかもしれません。建築のことはあまり詳しくありませんが、昔の人の知恵を垣間見るような気が致します。

長谷寺登廊は上中下の三廊から成ります。

写真の登廊は中廊に当たります。この場所よりもう少し下段になるものと思われますが、中廊の中程右側の石段に小さな穴があります。この穴を牛の目と呼んでいます。踏んではならないと言い伝えられる「牛の目」。

399段続く登廊の石段建設の際、牛に重い石を引っ張らせて運搬したと言い伝えられます。牛に感謝すると共に、その供養の意味を表すという「牛の目」。次回長谷寺を参詣する時には確認してみたいと思います。

長谷寺大黒堂

長谷寺大黒堂の打ち出の小槌。

打ち出の小槌の周りには、たくさんのネズミが並んでいます。

長谷寺と同じ桜井市内に、国宝の文殊菩薩像を安置する安倍文殊院というお寺があります。その安倍文殊院の境内に、閼伽井古墳という飛鳥時代の古墳があります。知恵の水が湧き出るという古墳ですが、お時間に余裕のある方は ”閼伽井つながり” で一度足を運んでみられてはいかがでしょうか。

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