禍を直す直毘神@高鴨神社

高鴨神社の祓戸神社には、「禍(まが)を直す」という直毘神(なおびのかみ)が祀られています。

あまり聞き慣れない名前の神様ですね。

ナオビノカミは古事記に語り継がれる神様で、黄泉の国へ行って穢れたイザナギが禊ぎをすることによって生まれた神様とされます。

高鴨神社の祓戸神社

御所市に鎮座する高鴨神社の祓戸社。

御祭神は大直日神、神直日神、伊豆能売神、底津綿津見神と記されています。こちらの祓戸社では、「直毘神(なおびのかみ)」を「直日神(なおびのかみ)」と記述しているようです。古代日本において、漢字表記の違いは重要なことではありません。あくまでも耳に響く音が大切なのです。ヒ(毘、日)という音は神霊を意味しています。「棺」という言葉の意味でもご案内致しましたが、古代に最重要視された音であることに間違いはないでしょう。

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千引岩で塞ぎ、日向に於いて禊をした伊邪那岐

伊邪那美(イザナミ)を追って、黄泉の国へ足を踏み入れた伊邪那岐(イザナギ)。

古事記の中でも大変有名なシーンですが、桃の実を投げ付けたりしてやっとのことで葦原中国(あしはらのなかつくに)に帰り着くことになったイザナギ。穢れてしまった自身を祓うべく、筑紫の日向(ひむか)にある阿波岐(あわき)の原で禊をしたと伝えられます。

高鴨神社鳥居

高鴨神社の鳥居。

阿波岐の原で身に着けていたものを脱ぎ捨て、川に飛び込んだイザナギ。脱ぎ捨てた衣や冠、ブレスレット等々から様々な神々が生まれたと云います。禊をした水からも神々が誕生したそうですから、この禊の影響力の大きさを感じずにはいられません。

その垢からは八十禍津日神(やそまがつひのかみ)、大禍津日神(おおまがつひのかみ)が生まれました。禍津日神(まがつひのかみ)は災厄の神を意味しています。そしてその ”禍を直す神” として、神直毘神(かむなおびのかみ)、大直毘神(おおなおびのかみ)、伊豆能売(いずのめ)が誕生しています。

穢れを祓って、禍を直す神こそがナオビノカミなのです。

凶事や災難である「禍事(まがごと)」を直してくれる有難い神様です。ナオビノカミを祭主とし、イズノメを巫女的存在に位置付ける考え方もあるそうです。

高鴨神社

さらにイザナギが身を漱いだことによって、海の神霊である底津綿津見神(そこつわたつみのかみ)が生まれています。

その他にも、イザナギの褌(ふんどし)からは道俣神(ちまたのかみ)、腕輪からは奥疎神(おきざかるのかみ)、杖からは衝立船戸神(つきたつふなとのかみ)、首飾りからは御倉板挙之神(みくらたなのかみ)等々が生まれています。

そしてついに、禊の最後には天照大神、月読命、建速須佐之男命の三貴神(さんきしん)が誕生しています。一連の神々誕生の流れを見てみると、禍を直す目的で生まれたナオビノカミの重要性が浮かび上がるような気が致します。

高鴨神社の龍絵馬

全国各地の祓戸神社には、清流の女神と言われる瀬織津姫(せおりつひめ)が祀られているのをよく目にします。

大祓詞にも登場する女神で、その清冽なイメージが祓戸社にはピッタリです。

高鴨神社もそうなのかなと思ったのですが、その予想は見事に裏切られました。禍を直す直毘神(なおびのかみ)・・・また一つ神様の名前を覚えることになりました。

ちなみに、黄泉の国(あの世)と葦原中国(この世)の間には千引石(ちびきいわ)という巨大な岩が存在しているようです。後を追って来るイザナミを遮るために、千人がかりで引くような大岩で黄泉の国との間に境界線を引いたのです。この時、伊邪那岐は伊邪那美に離婚を言い渡したと伝えられます。「事戸渡し(ことどわたし)」と呼ばれる幕引きによって、あの世とこの世は隔てられることになりました。

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